研究概要 |
1~2nm領域のポリビニルピロリドン(PVP)保護金クラスターをバッチ式混合法およびマイクロミキサーによって調製し、質量分析法によってサイズを評価した。その結果、マイクロミキサーによって0℃もしくは40℃で合成した場合には、40量体を中心とした正規分布に近いサイズ分布を持つクラスター(1)と35,43,58量体といった魔法数クラスターを多く含むサンプル(2)が合成されていることがわかった。バッチ式混合法により0℃で合成した場合には、1に近い分布を持ち70量体以上の分布が多いサンプル(3)、40℃で合成した場合には、70,110,130,150量体などの魔法数クラスターを多く含むサンプル(4)が得られた。これら4つのサンプルについて、アルコールの空気酸化反応に対する触媒活性のサイズ依存性を定量的に評価した。その結果、水中におけるアルコールの空気酸化に対しては、(1)70量体以下のクラスターのみが活性種として作用していること、(2)同サイズ以下では魔法数クラスターだけでなく、他のサイズのクラスターも同程度の活性を示すことを明らかにした。PVP保護金クラスターは、PVPからの電子供与によって負電荷を帯びていることが以前の分光測定から明らかになっている。すなわち、70量体以下ではこの負電荷のエネルギーが酸素分子のLUMOレベルより高くなるため、酸素分子への電子移動が可能になり、酸素分子が活性化されることで酸化反応が進行するものと考えられる。この結果は、金クラスターの反応性が、電子的な要因に支配されることを示しており、例えば保護分子の種類や異種原子のドーピングによって余剰電子のエネルギー準位を操作することで、触媒活性を制御できると考えられる。
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