研究概要 |
本年度はコンプラナジン類の全合成を達成する上で必要な単量体リコジンの不斉合成を達成した。Delta-バレロラクタムより合成したジエンとヒドロキシピコリン酸より調製した不斉補助基を有するジエノファイルのDiels-Alder反応を行い、望みの立体化学を有するオクタヒドロキノリンを主生成物として得た。続いてトリフラート化、Heck反応により光学活性な四環性化合物を得た。また、昨年度、確立したラセミ合成経路により同じ四環性化合物大量に合成し、二段階(加水分解、エステル化)での速度論的光学分割を試みた。種々検討した結果光学活性なメントールとの縮合により、ジアステレオ選択的Diels-Alder反応を用いた経路で得たものと同じ不斉中心を有する四環性化合物の合成に成功した。続いて、ケトンの還元、立体選択的なメチル基の導入、脱保護によりリコジンの不斉全合成を達成した。さらに、コンプラナジンの全合成に向けて光学活性な四環性化合物の連結について検討した。 コンプラナジン類は二量体構造を有しているが各単量体は酸化度がそれぞれ異なる。コンプラナジンBおよびDや構造類縁体の調製を視野に入れて、モデル化合物を用いてピリジン環の段階的還元について検討した。その結果、アシルピリジニウム塩を経由して還元することで1,2および1,4-還元体を選択的合成する条件を見出した。特に、1,4-還元は高収率で反応が進行することを明らかにし、コンプラナジン類の全合成のみならず、他の生物活性を有する天然物の合成にも応用可能であることを示した。また、本還元条件は構造活性相関研究に必要な生合成で得ることのできない種々の単量体の調製を容易にする有用な方法である。
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