研究課題
22年度の研究において、溶液化学と固体(結晶)化学を結びつけるために重要な発見があった。溶液中でパラジウムイオンと3座トリアジン配位子の自己集合により生成する正八面体型M6L4ケージを、コバルトイオンでネットワーク化することにより、同様なM6L4骨格を持った細孔性錯体、すなわり結晶性ホストへと発展させることに成功した。溶液、固体それぞれのM6L4ホストは、電子豊富なゲスト分子(TTFやジフェニルアミン)を選択的にケージ内に包接することがX線結晶構造解析から明らかとなった。また、ネットワークM6L4ホストはその内部にM12L24型の球状錯体も含んでいることが分かった。この球状錯体に関しても、溶液で自己集合による生成が確認されており、まさに、液・固相で全く同じ分子環境を有する一対のホスト錯体を手に入れたと言える。さらに、配位子の設計を変えることで、カプセルをネットワーク化した細孔性錯体の合成にも成功した。この結晶カプセルの中にはチオフェンやジフェニルエーテルなどのゲスト分子が強く包接され、沸点以上に加熱しても外部に放出されないことも見出した。さらに、シクロペンタジエンを4分子内包したネットワークカプセルは、Diels-Alder 2量化が効率的に抑制され、高温条件においてもシクロペンタジエンをモノマーとして包接しておくことができる性質を示した。一方、結晶内反応の開拓においても顕著な結果を得た。これまで困難とされてきた結晶内での有機亜鉛試薬のカルボニルへの付加反応をはじめ、スチルベン類縁体のtrans選択的光異性化を見出した。これらの反応は、すべてX線結晶構造解析により追跡することに成功している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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