厚さが1ナノメートル程度で、数百ナノから数マイクロメートル程度の側部長をもった層状金属酸化物ナノシートは、水を分解して水素と酸素を作り出す光触媒として有望な材料群である。本年度は、400ナノメートル以上の可視光に応答して水を分解できる新しい層状金属酸化物ナノシートの開発に取り組み、可視光吸収中心となる異種金属イオンをドープした遷移金属酸化物ナノシート材料に着目して研究を進めた。異種金属としてIrやRhをドープした遷移金属酸化物ナノシートは、ゾルーゲル法の一種である錯体重合法で得た層状遷移金属酸化物を酸性水溶液中でプロトン交換した後、水酸化テトラブチルアンモニウムで処理することでコロイド状溶液として得ることができた。各種キャラクタリゼーション及び光触媒反応に際しては、コロイド溶液を酸処理することで凝集体として用いた。エックス線回折、走査型電子顕微鏡、及び紫外可視拡散反射分光法によって、層状構造からナノシートへの構造変換と可視光応答性の発現を確認した。このようにして得られた異種金属イオンドープ型ナノシートは、電子供与剤としてメタノールを含む水溶液から、400ナノメートル以上の可視光に応答して水素を発生できる光触媒として機能した。 また、硝酸銀を電子受容剤とした水の酸化反応による酸素発生にも活性を示した。これらの結果から、異種金属イオンドーブ型ナノシートが、可視光で水を分解するポテンシャルを有した新しい光触媒材料であることを見出した。
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