前年度に引き続き、生体内神経伝達物質に応答する蛍光性RNA-ペプチド複合体(リボヌクレオペプチド:RNP)センサーの構築方法の開発を行った。従来の蛍光性RNPセンサー構築法に従い、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニンに対して選択的に応答する蛍光RNPセンサーを構築した。また、本年度は新たに、複数の共有結合複合体RNPセンサーを同時に用いることにより、同一溶液中に存在する複数の標的分子をそれぞれ同時に異なる波長で検出する方法を開発した。まず、ATP応答性蛍光RNPセンサー及び、GTP応答性蛍光RNPセンサーの、RNAサブユニットと蛍光修飾Revペプチドサブユニットを共有結合により連結し、複合体形成が安定化した蛍光性RNPセンサーを構築した。その際に、ATPセンサーはCy5-Rev(励起、発光波長:650nm、670nm)を、GTPセンサーはフルオレセイン-Rev(励起、発光波長:485nm、535nm)を用いて各蛍光センサーを合成した。作製した蛍光センサーは、ATPもしくはGTPに対して選択的に蛍光応答性を示すことを明らかにした。次に、ATPセンサーとGTPセンサーが共存する溶液に、ATP及び、GTPを滴定し、それぞれの蛍光センサーに特徴的な励起・発光波長を用いて蛍光強度変化値を測定した。その結果、溶液中のATP濃度変化を670nmで、GTP濃度変化を535nmで、それぞれ特異的に検出することができた。さらに、得られた蛍光強度変化値は、各蛍光センサーを単独で用いた時と同様の挙動を示したことから、複数の共有結合複合体センサーが同一溶液中で使用できることを明らかした。以上の結果より、共有結合により安定化した蛍光性RNPセンサーを用いて、複数の生体内神経伝達物質を異なる波長で同時に観測する基盤的方法論の開発に成功した。
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