研究概要 |
原子核(プロトン)の量子効果の顕な取り込みを可能とするための新規分子シミュレーション手法を開発するために、本研究では、A.新規「電子・核量子分子動力学法」の開発、B.開発手法の有効性の検証と応用計算の課題に取り組む。研究最終年度は、A.新規「電子・核量子分子動力学法」の開発に加え、B.開発手法の有効性の検証と応用計算の課題に取り組んだ。本研究では、プロトン移動ダイナミクスの詳細を解析するために、H_2O分子とH_3O^+からなるH_5O^+_2およびそれらの重水素・三重水素置換体(D_5O^+_2、T_5O^+_2)を計算対象として取り上げた。電子の基底関数には6-31G(d,p)、原子核の基底関数には[1s]GTFを設定しMP2レベルの分子動力学計算を実行した。ダイナミクスシミュレーションの結果、酸素原子間距離の振動に連動し、水素結合したプロトンは、波動関数の収縮を繰り返した。また原子核の質量の違いが波動関数の分布へ影響することで水素結合長などの構造パラメータの変化する幾何学的同位体効果を表現することが可能になった。このように、骨格構造の変化を含めたプロトン-電子カップリングに対する詳細な解析が本手法により可能となった。以上の計算結果については、触媒討論会での口頭発表のほか、The 4^<th> French-Japanese Workshop on Computational Methodsin Chemistryにおいて招待講演を行った。またこれらの計算結果を論文としてChemical Physics誌へ投稿し掲載された。
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