本研究は、酸化コバルト担持金ナノ粒子の特性を利用し、未だ達成されていないニコラス反応の触媒反応化を目的としている。研究計画では、(1)酸化コバルト担持金ナノ粒子触媒のニコラス反応への適用性、(2)想定している反応基質の反応への適用性、(3)アルキンのヒドロホルミル化を触媒するパラジウム触媒と酸化コバルト担持金ナノ粒子触媒の共存性、の3点を研究の基礎をなす知見と位置づけている。 平成21年度は研究初年度であり、主に基礎的知見の収集に充てたが、上記3点の中でも特に(1)と(2)について集中して検討を行った。まず(1)については、化学量論量の活性種を発生するのに十分と考えられる量の触媒を用い、反応を検討した。その結果、ごく微量ながら目的物と推測される化合物が得られた。また、同時に得られた副生成物の13C NMR解析を行うと、200ppm付近に一酸化炭素のカルボニル基に由来すると思われるピークが観察され、反応系中で触媒から活性種が発生し、それが基質であるアルキンと複合体を形成していることが示唆された。(2)については、コバルトカルボニルと基質との複合体形成を試みたところ、低収率ながら目的物が得られた。しかしながら、それに続くプロパルギル位での環化付加反応は、期待通りには進行しなかった。その理由としては、使用した基質は分子内ニコラス反応に利用された実績のあるものだったが、生成物は多少歪んだ構造を有しており、それが目的反応に悪影響を与えた可能性が考えられる。 平成22年度は、以上の結果を基にさらなる検討を行う予定である。
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