水溶液プロセスによって、金属酸塩化合物のナノからマクロにわたる階層構造体を作製し、リチウムイオン二次電池電極としての特性評価をはじめその機能開拓に関する多面的な検討を行った。具体的には以下の3つの材料の合成と機能開拓を試みた。 1、水溶液中の化学合成プロセスを活用し、リチウムイオン二次電池電極として使われているマンガン酸リチウム結晶の階層構造体の合成を行った。合成時にコバルトイオンをドープすることで組成の制御を行い、リチウムイオン二次電池電極としてのサイクル特性(繰り返し充放電における耐久性)向上を確認した。 2、水溶液プロセスによって一酸化スズナノ構造体や酸化マンガンの階層構造体の合成を行い、その電気化学デバイスとしての特性や光電気化学特性の評価を行った。これらの階層構造体は、合成時に様々な有機分子を添加するこどで反応と結晶成長を制御し、通常の合成条件では作製しにくい結晶多形や酸化数を持つ化合物の析出、ナノスケールから構造が制御された結晶を得ることに成功している。これらの材料に関してもリチウムイオン二次電池電極としてのサイクル特性の向上や、ナノスケールでの構造制御に特異的な光電流の生成などを確認している。 3、金属酸塩化合物を前駆体とした金属酸化物の合成を行い、ナノ結晶が凝集することなくオパールのようにマクロなスケールまで均一に集積した構造が作製できることを見出した。このプロセスは様々な化合物への適用が可能であり、次年度以降の展開および機能化への準備段階の実験が完了したといえる。
|