研究概要 |
本研究の目的は,「歩行・走行ロボットの新たな制御手法を構築しその実験的検証を行うことを通して,ヒトのロコモーション(二脚歩行・走行運動)の発現原理を理解し設計原理を解明すること」である.本年度は,前年度に得られた受動走行の自己安定化メカニズムに関する知見に基づき,受動走行に内在し走行運動を安定化する「陰的」制御則と親和性の高い「陽的」制御則の設計方策について検討した. 具体的には,定式化した受動走行を安定化するフィードバック構造に基づき,走行運動の安定性をさらに向上させる制御則を導出した.理論解析の結果,走行運動の着地点(地面に着地する瞬間の状態)に関するポアンカレマップの最大固有値を減少させる制御則の設計が可能となった.さらに,導出した制御則の妥当性を検証するため,提案する制御則を実装した準受動走行モデルを構築し,シミュレーションによる検証を行った.その結果,提案する制御則を実装することで初期値に対する頑健性が向上することが確認された.また得られた制御則は,安定な受動走行を実現する身体ダイナミクスを効果的に活用し,走行制御の時空間的「コツ」を抽出していることを示唆する結果が得られている.本研究は,安定・高効率走行を実現する制御則の設計論を提供し,走行運動の発現原理の理解に迫る知見を提供すると考えられる. また研究業績として,世界初の受動走行の実機実験に関する研究が,ロボット分野における一流雑誌であるIEEE Transaction on Roboticsへ掲載された(2011年2月).また,多重時間スケール(多重リズム性)に着目した制御モデルに関する研究論文2編の掲載(1編は印刷中)も本年の業績である.
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