基礎物性研究およびバンド計算結果から、FCC構造のFe_xPt_<1-x>はx=0.75以上のFe高濃度領域において常磁性状態から強磁性状態への磁場誘起1次相転移、すなわち遍歴電子メタ磁性転移を示すことが予測され、転移に伴い磁気モーメントの大きな変化が生じて巨大体積磁歪や巨大磁気熱量効果などの新機能の発現が期待される。しかし、x=0.75以上の組成領域ではBCC構造へのマルテンサイト変態が生じるため、FCC構造のFe_xPt_<1-x>を単相で得るのは困難となる。 従来のFe系合金におけるマルテンサイト変態の研究によると、侵入型元素の添加および第3元素部分置換によりマルテンサイト変態温度が抑制されることが期待される。そこで、本年度は元素を所定量溶解して脱酸素雰囲気下で均質化熱処理を行うための実験環境を整備して、Fe_<80>Pt_<20>においてFeのMo部分置換によるマルテンサイト変態の抑制を試みた。しかし、得られた試料はBCC構造であり、十分にマルテンサイト変態を抑制するには至らなかった。 Fe_xPt_<1-x>のマルテンサイト変態はナノオーダー粒子化することでも抑制されることが期待される。そこで、上述のドライプロセスだけでなく、本研究では溶媒としてポリオールを用いたウエットプロセスでも試料を合成してマルテンサイト変態の抑制を試みる。本年度は、ポリオールプロセスに習熟するために、まずNiの合成を行った。また、ポリオールプロセスによる合成において粒子径を制御するための指針を得るために分散材の効果を調べた。その結果、ポリビニルピロリドンの添加が粒子の分散に有効であることが明らかになった。
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