研究概要 |
越水による水害低減を目的とした樹林帯の整備計画に資するため,本年度は主に,1)樹木の破壊限界把握のための現地試験,2)水理模型実験,を実施した.1)に関しては,堤防の余盛り部分に配置した樹林帯の破壊限界を樹木引き倒し試験より把握した.本試験に関しては,過去3度(朝霞調節池,荒川本川・明戸地点,高麗川・坂戸地点において)試験を実施している.本年度は,荒川下流域の高水敷上の樹木伐採工事に合わせて引き倒し試験を実施した.特に,地盤強度と根の構造に着目し,それらの相違が転倒限界に及ぼす影響を把握した.その結果,根茎構造(浅根型,深根型)の相違による根鉢のサイズ(根鉢の表面積および体積),土壌の粘着性が転倒限界モーメントに大きく影響していることが明らかになった.このことより,水害防備林を堤防法面に設置する際に,転倒に抵抗力のある根の構造や,それと地盤の強度との関連から転倒限界を考慮することが可能となる. 一方,水理模型実験に関しては,樹林帯背後の流速・流体力低減効果を明らかにするため,越流による堤防の破壊を考慮しない,固定床での水理模型実験を行なう.実験水路の作成が採択決定後に実施せざるを得なかった.そのため,現段階では当初計画していた成果を挙げるには至っていない.しかしながら,上記実験を開始した段階であり,早急に実施する予定である.本水理模型実験では,1)樹林帯の抗力特性,2)樹林帯設置区間における底面せん断力に注目し,これらのパラメータは樹林帯の設置パターン(密度,樹林帯の鉛直構造)と関連付ける.
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