研究概要 |
本研究の目的は,射出成形を用いた高アスペクト比ナノ構造を生産する方法を提案・開発し,それを用いて新しい光学素子を創製することである.射出成形は原理的にスループットが高いが,ナノ構造を転写することは難しい.当然,高アスペクト比構造はさらに困難でなる,樹脂が金型に触れた瞬間にスキン層と呼ばれる固化層が形成されるためである.本研究では,初年度である昨年は,金型表面を樹脂射出中のみガラス転移点以上に温めておく熱アシスト射出成形法を提案し,原理確認できた.本年度では連続で成形可能な金型システムを開発することと,新しい光学素子,具体的には反射防止構造を製作することが目的であった. (1)連続成形可能な金型システムの製作 微細構造が施されているNi電鋳スタンパと射出成形の金型ベースの間に急加熱ヒータを入れた.樹脂射出直前のスタンパ表面温度が100℃になるように制御し,射出完了と同時にヒータを切り,直ちに冷却を行う.その後,金型ベースが常温に戻る前に(約80℃)成形品を取り出し,次の成形のために加熱開始.このサイクルを4秒で行うことが出来た.このサイクルタイムは,急加熱ヒータを用いない通常の射出成形と同等であり,有用なシステムの設計といえる.ピッチ400nm(溝幅200nm)、深さ600nmと、アスペクト比3程度の微細形状が成形可能であることを示した. (2)反射防止構造の成形 半波長程度のピッチ,深さ波長程度のコーン形状またはホール形状を樹脂表面に施し,面内平均屈折率を傾斜させることで,反射防止機能が発現する.本研究で開発した熱アシスト射出成形を用いて,ピッチ200nm深さ500nm程度のコーンアレイをポリスチレン表面に成形したところ,急加熱ヒータを用いた場合は充填率が高く,反射率が平坦なポリスチレン表面で5%であるものが,1%以下に低減できた.
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