III-V化合物半導体光源とSi導波路との一体型デバイス(ハイブリッドレーザ)は、高集積光学回路の構築に有効である。特に量子ドット(QD)レーザは低い発振閾値、高い温度動作安定性を有することから高集積化に適している。今回、QD光デバイスとSi導波路集積化技術の開発への取り組みの一つとして、ウェハ融着によるSi基板上電流注入型QDレーザの動作の分析および高性能化を行った。有機金属気相成長法(MOCVD)によりGaAs基板上にA10.4Ga0.6Asクラッドおよび、InAs/GaAsQD層5層を含むレーザ層を成長した。Au薄膜を介したGaAs/Siウェハ融着とGaAs基板の選択的溶解により、Si基板上にレーザ層を転写した。ブロードエリアFabry-Perotレーザを作製し、InAsQDの基底準位における1.3umでの室温発振(閾値電流密度360A/cm2)を観測した。この発振閾値電流密度は、Si上の半導体レーザとして最小値の部類に入る。電磁気解析により、融着に用いた金属薄膜層は、界面強度および導電性を高めるだけでなく、レーザ共振器からのSi基板側への光の漏れを抑制する効果も有することが分かった。さらに導電性ウェハ融着を用いた、Si導波路と直結した新規化合物半導体/シリコンハイブリッドレーザの提案および設計を行った。本提案の構造では、我々の実験結果に立脚した高導電性GaAs/Siヘテロ界面により、垂直方向の電流注入が可能となっており、既存のハイブリッドレーザで用いられている水平方向の注入と比較して高効率化が期待され、かっ、シンプルな作製プロセスが実現可能となることから低コスト化の利点も有する。本研究で得られた一連の成果は、大容量通信用QD/Siハイブリッドレーザへの展開の布石である。
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