研究概要 |
鉄鋼業においてマルチフェイズフラックスを利用した脱リンを行う際、スラグ中に固相として存在することが想定されるCaO-P_2O_5-SiO_2三元系の酸化物(固相)中のリン酸化物(P_2O_5)の活量測定を実施した。特に、本研究では、(CaO)_3P_2O_5(CaO)_2SiO_2間の様々な組成の酸化物(固相)を測定対象とし、ダブルクヌーセンセル-質量分析法を用いて酸化物中のリン酸化物の熱力学諸量を得ること目的とした。(CaO)_3P_2O_5-(CaO)_2SiO_2の状態図によれば、脱リン温度の1300-1400℃では、組成によりα'C_2S,α'C_2S+R,R,R+A,A,S+R,S,C_3P+Rと様々な相が存在する。平成22年度は、電気炉内で焼成することにより各組成の試料を作製し、ダブルクヌーセンセルー質量分析法を用いて(CaO)_3P_2O_5-(CaO)_2SiO_2間の全組成域にわたり熱力学測定を試み、P_2O_5が比較的高い各組成でのP_2O_5の活量を得た。質量分析法では、試料と平衡するガスの蒸気圧をそれに比例したイオン電流として検出する。酸化物の組成および測定条件により異なるが、1300℃前後の温度では、作製した酸化物中のリン酸化物と平衡するリン(P_2)およびリン酸化物(PO,PO_2)のイオン電流を検出することが可能であり、これらのイオン電流と標準試料からのイオン電流を比較することで、目的とする熱力学諸量を得た。本来、酸化物の凝縮相(特に固体)の高温での熱力学測定は、従来の化学平衡法などでは凝縮相間の平衡到達に長時間を要するなど困難が伴った。しかしながら、この手法を用いることで、酸化物の凝縮相(固相)の熱力学測定を簡便に実施することが可能となった。
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