研究概要 |
電気推進機とは,推進剤をプラズマ化し,電気的に加速・排出することで推力を発生させるもので,従来の化学反応を利用して推力を得る化学推進機に比べ,比推力を1桁以上も大きくすることが可能である.中でも,ホール型推進機は,推進効率が高いため,宇宙機用エンジンとして非常に有望である.この有望なホール型推進機であるが,放電電流の振動する現象が確認されており,実機搭載上,その抑制は不可欠である.これに対し,推進剤を不均一に供給することで,放電振動が抑制されること,また一方で,その際に推進効率が低下してしまうことが,これまでの研究から確認された.本研究の目的は,この推進剤の不均一供給による振動低減及び推進効率低下のメカニズムを明らかにし,効率低下を招くことなく振動低減の実現を試みることである. 昨年度までの成果から,ホール型推進機の安定作動領域の拡大に伴う推進効率の低下の一部が,イオン加速部の壁面への損失によることが明らかとなり,壁面の一部を絶縁体としてイオンが壁面へ損失しづらい状態を作り出すことで,この損失の低減を試みた.その結果,推進効率が最大で5%程度改善した.また,推進剤の不均一供給は,推進機内部全領域にて電子電流を大きくすることで,作動を安定化させる一方で,そのこと自体が推進効率の低下を招いているため,推進機内部の磁場形状を最適化することで,推進機内部の陽極内部のみ電子電流が大きくなる状態となるようにした.この結果,推進効率の低下を招くことなく,安定作動領域の拡大された推進機となることが明らかになった.
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