ホール型推進機とは、電気推進機の一種であり、宇宙機用推進機として現在最も有望なものの一つである。この推進機において最も深刻な問題は、放電振動と呼ばれる非定常作動である。この作動安定化を行うため、推進剤の不均一導入が効果的であることが発見された。このため、この原理を模索するべく、推進機内部のプラズマを模擬する数値解析コードを開発した。その結果、推進機内部における電子の移動度が大きいほうが、放電振動の低減につながることが明らかになった。 しかしながら、推進剤の非均一導入法を用いると、推進効率も低下してしまった。この推進効率の低下は、大きく2つの原因があることが明らかになった。ひとつは生成したイオンの壁面への損失量が増加したことであり、もうひとつは、電子の移動度が推進機全体において増加したために起きた振動低減のためには不可避であるものであった。一つ目は壁面に絶縁体で覆いをすることで解決した。2つ目は振動低減の原理上不可避であった。 そこで、推進機全体ではなく、その一部でのみ、電子の移動度を上げるべく、印加磁場形状の最適化を行った。その結果、推進効率を低下させることなく、放電振動の低減が実現した。
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