研究概要 |
前年度までに確立した無機電解質(NaCl)の有機溶媒へのナノ分散手法について、他の化学種への応用性を検討した。親水鎖(ポリエチレングリコール鎖)および疎水鎖(アルキル鎖)を有するアニオン性界面活性剤を飽和吸着させることで、粒子表面に局所な親水性場を設計したFe_3O_4ナノ粒子を対象に、親水性場へのNaCl,NaOH,K_2CO_3の析出を検討した。無機塩の析出状態をFE-SEM/EDSおよびICP-AES、無機塩を担持したFe_3O_4ナノ粒子の低極性有機溶媒(トルエン)中における分散状態をDLSにより評価した。NaClと比べ、塩基性を呈する電解質の方が、ナノ粒子表面でポリエチレングリコール鎖が形成する親水性場への塩析出量が増大することが明らかとなった。また、析出させる試薬の化学種をNaOHやK_2CO_3に変えても、無機電解質を担持したFe_3O_4ナノ粒子はトルエンに一次粒子近くまで再分散することが確認され、無機電解質もナノサイズで分散していることが明らかとなった。さらに、無機電解質を析出させる局所親水性場領域の増大に向けて、カチオン性高分子分散剤とアニオン性界面活性剤を用いる交互吸着プロセスによる粒子表面修飾法を検討した。SiO_2やAgナノ粒子を対象に、ポリエチレンイミンを飽和吸着させた後、アニオン性界面活性剤を吸着させることで、ナノ粒子表面により大きな親水性場を有する有機溶媒分散性ナノ粒子の調製に成功した。また、以上のプロセスを組み合わせて調整した無機電解質担持Fe_3O_4ナノ粒子を用いて、Aldol反応などをモデルにした触媒としての応用性を検討した。
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