研究概要 |
本研究は,動的再結晶や鉄鋼材料におけるマルテンサイト変態など,弾塑性変形を伴う微視組織形成過程を解析可能なPhase-Fieldモデルの構築およびその数値シミュレーション法を開発するものである.平成21年度においては結晶塑性Phase-Fieldモデルを構築し,それを用いて鉄鋼材料における塑性変形を伴うマルテンサイト変態挙動の数値シミュレーションを可能とした.しかしながら,結晶塑性Phase-Fieldモデルでは,結晶塑性解析とPhase-Field計算の連成解析であるため,計算負荷が大きく,定量的な3次元シミュレーションのためには数値計算の高速化が重要であった. そこで本年度は,複数台のGraphic Processing Unit(GPU)を用いてPhase-Fieldシミュレーションを行うためのCUDAプログラムを開発し,高速化を行った.プログラムの評価を行うため,3次元凝固シミュレーションに適用し,従来のCPUを用いた計算に比べて数100倍の高速化できる事を確認した.さらに,多結晶体における弾塑性変形と組織発展を同時に解析するためには,結晶塑性Phase-FieldモデルにMulti-Phase-Field法を適用する必要がある,そこで,Multi-Phase-Field法を用いた組織形成シミュレーションについてもGPU計算のための専用プログラムゴードを作成し,高速化を行った.現在は,上記の研究成果をもとに,結晶塑性Multi-Phase-Fieidモデルを構築中であり,特に結晶塑性解析についてもGPUで計算を可能とするため,CUDAのライブラリであるCUFFTを用いた高速化を行っている.これにより,多結晶体中での弾塑性変形が伴う組織形成過程を効率的に解析可能となることが期待される.
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