研究課題
若手研究(スタートアップ)
本研究は、従来の化合物半導体をベースとした導波路型光素子に、誘電率や透磁率の値を人工的に制御できる「メタマテリアル」の概念を融合することによって、既存の技術では不可能であった新しい機能をもった素子(左手系光制御デバイス)を実現することを目指している。本年度では、その一例として、光通信帯域におけるメタマテリアルの動的制御をベースとしたデバイスとして全光メモリを提案し、基本的動作を得ることに成功した。提案するメタマテリアルを用いた全光スイッチの構造を示す。本素子は1×1MMIカプラの上部にスプリットリング共振器(SRR)アレイを配置した構造を持つ。本デバイスにおいて、伝搬光(TEモード)の周波数が共振器の共振周波数と一致すると、伝搬光とSRRが共鳴し、アレイ近傍の有効透磁率に変化が生じる(屈折率が負となる)。屈折率が負の媒質を介するグースヘンシェンシフトは後方にずれるため、光は素子内にトラッピングされる。ここで、素子上部からSRRアレイ領域にキャリア誘起光を入射し、半絶縁InPクラッド層を伝導性にする。するとSRRのギャップ部が閉じ、これにより磁気特性が消滅する(比透磁率が1に戻る)。これにより、素子内は通常の光伝搬状態となり、光の読み出しを行うことができる。本研究では4分割シングルSRRを採用した。SRRの解析は、第2近接の相互作用までを考慮し、ビオ・サバールの法則と均質化理論を用いて行った。その後、上記解析に基づいて、実際にデバイスを作製した。測定は単一偏波状態の信号光を対象サンプルに入射し、透過光強度の波長依存性を観測した。SRRを有するMMIに関しては波長により明確な強度差が観測された一方、SRRアレイを持たない通常のMMIについては、波長依存性はほとんど見られなかった。これは、本素子は1.5μm帯においてSRRアレイによる磁気共振応答を示していることを意味する。
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IEEE J.Quantum Electron. 45
ページ: 769-776
Advances in Lasers and Electro optics(IN-TECH, Austria)
ページ: 117-136