研究課題
本研究は、従来の化合物半導体をベースとした導波路型光素子に、誘電率や透磁率の値を人工的に制御できる"メタマテリアル"の概念を融合することによって、新規デバイスの実現を目指している。本年度では、その布石として、InP系導波路素子に金属微細共振器アレイ(メタマテリアル)を導入したデバイスを作製した。光通信帯域において、導波路型光素子に比透磁率が1ではない層を導入するという試みは、理論でこそ様々な検証が成されているものの、実験面では世界で数件の報告があるのみである。特に、現在の光デバイスの主流であるInP系の導波路型素子に限れば、世界的に見ても未だ報告はされていない。そこで本研究では、実際に比透磁率が1ではない層をInP系の導波路型素子内に実現できるかを検討した。本素子は1×1MMIカプラの上部にスプリットリング共振器(SRR)アレイを配置した構造を持つ。本デバイスにおいて、伝搬光(TEモード)の周波数が共振器の共振周波数と一致すると、伝搬光とSRRが共鳴し、アレイ近傍の有効透磁率に変化が生じる。これによりSRRを適当な構造に設計することで、MMI上部に、比透磁率が1ではない層を実現することが出来る。測定は偏波コントローラにより得られた単一偏波状態の信号光を対象サンプルに入射し、透過光強度の波長依存性を観測した。TEモード光においては、測定波長に依存して透過光強度差に変化が見られた。また、SRRのサイズに応じて強度差のピーク波長が長波側にシフトしていく様子が観測され、SRRのサイズが350×350nm^2のとき、波長1500nm付近においてピークが得られた。一方、TMモード光に対しては、TEモード時のような波長依存性は観測されず、ほぼフラットであった。実験結果にフィッティングを行うことにより得られたSRRアレイの比透磁率は、およそ200THz(1500nm)において、-0.4から2.4まで変化していることが見積もられた。
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