テラヘルツ周波数帯光源のキーデバイスである共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いたテラヘルツ発振器において、素子の高周波化を行うためには、空乏層に高い電圧が印可されていることによって起こるΓ-Lバレー間散乱を抑圧することが必要である。そのため、今年度スパイクドーピング構造を持つRTDと、極薄バリアと傾斜エミッタを持つRTDに関して研究を行った。 スパイクドーピング構造を持つRTDでは、コレクタ側スペーサ層に濃度の異なるスパイクドーピングを持つRTD発振素子を作製し、発振特性を測定した。測定より、スパイクドーピングの濃度が上昇すると、RTDの容量が大きくなってしまうが、空乏層の電界が緩和されΓ-L散乱は抑圧出来きることが分かった。スパイクドーピングの濃度がおよそ2x10^<18>cm^<-3>の時最適となり、その基板により、898GHzまで発振周波数が向上出来た。 上記構造ではRTDの容量が大きくなってしまうため、新たに、極薄バリアと傾斜エミッタを持つRTDを提案し、発振素子を作製した。傾斜エミッタにより動作点の電圧が下がり、空乏層にかかる電界が小さくなるため、Γ-L散乱の抑圧ができ走行時間が短縮される。さらに薄膜バリアによりトンネル時間も短縮される。この構造を持つ発振素子により室温電子デバイスでは最高周波数の951GHzの基本波発振を達成した。さらなるRTDのデバイス面積の縮小により、1THzを超える発振が期待できる。
|