研究概要 |
UWBレーダは数mm級の距離分解能を有し,粉塵環境・高濃度ガス・暗闇・強い逆光等の光学計測が適用困難な状況下でも高精度なセンシングが可能である.本年度では,特にレーダ画像領域拡大に関する各種の検討課題を実施した.前年度までに,既存の超波長分解能画像化手法(RPM法)を任意のアンテナ走査軌道に拡張させ,同拡張によって生じる虚像抑圧技術を開発した.一方,比較的遠方領域にある目標形状を再現するには,広大な観測領域が必要であるが,災害現場等の救助ロボット等では,瓦礫や障害物等により十分な開口面積は確保できない.このため,狭小な観測領域で目標形状を再現する手法が必要となる.同問題に対し,まず目標形状を近似的に複数楕円体の集合とみなし,限られた推定境界点から楕円体による目標外挿補間を行う手法を提案した.同手法では,雑音環境下におけるデータ空間の補間誤差が,実空間上の補間誤差に対して著しく低いことを発見し,データ空間上に写像された変形楕円体に対してデータを整合させることで,安定性及び精度を飛躍的に改善させた. また,多重散乱波を積極的に利用した画像化領域拡大法についても検討した.多重散乱波は複数散乱中心の情報を保有しているため,画像領域拡大に極めて有用である.従来の二重散乱波画像化法は,受信信号の多重積分に基づくため,特に3次元問題では,数十時間程度の膨大な計算量が必要となる.これを解決するため,申請者は二重散乱波の距離波面の素子に関する偏微分と2つの散乱中心への到来角度との解析的関係を導出し,RPM法の特徴を利用して,二重散乱波から抽出される距離情報のみを用いて,高速に目標境界点群へ写像させるアルゴリズムを開発した.これにより,目標境界点群を1/100波長規模の精度で再現できるだけでなく,約10秒程度で3次元画像を得ることができるため,従来の問題点を飛躍的に改善することが可能となった.
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