研究概要 |
感圧・感温塗料(PSP,TSP)は圧力や温度を非侵襲かつ面(二次元)情報として高空間分解能で計測することができる機能性分子センサである.複雑な非定常の熱流体現象を解明するためにこの両者を複合化させ,圧力と温度の同時計測の実現が求められている.本研究では,従来の混合型複合塗料で問題であった色素の相互干渉による特性劣化の問題を解決するため,PSPとTSPを混合せず,インクジェットプリンタの技術を用いて微細なマイクロドット配列に塗り分け物理的に完全に分離することで,PSPとTSPの複合化を図ることを本研究は目的としている.本研究は4月応募,9月交付であったため初年度の平成21年度は約半年と研究期間が短かったが,PSP/TSPプリンタシステムの開発と複合センサの基礎特性の評価という目標をもって研究を行った.PSP/TSPはポリマーと色素を有機溶媒で溶解しているため,溶液の粘度が高い上に沸点が低い.そのためインクジェットヘッドから安定吐出するのが困難である.まずインクジェットヘッドを適切に選定するための調査を行い,プリンタシステムを設計,構築した.また,吐出した液滴を観察するためのカメラやその解析システムなどの観察系を構築した.次に第一歩として,色素,ポリマーを含まない有機溶媒のみの安定吐出の条件を調査し,ノズルヘッドのピエゾ素子への電圧の大きさやタイミングの最適化を行った.現在は引き続き色素,ポリマーを含んだ溶液の安定吐出条件の調査を行っている.また,並行してインクジェットに用いる感圧塗料,感温塗料の調査を行った.色素やポリマーを様々に変化させて,圧力チャンバー内で校正試験を行い,感度特性を調べた.今後インクジェットプリンタによって複合塗料サンプルを作成し,感度特性や空間分解能やその特性を調べ,圧力や温度が大きく変化する衝突噴流の流れ場を用いて実証試験を行う予定である.
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