平成21年度は、メソポーラスシリカ(SBA-15)粉末を作製し、そのメソ孔内部に金ナノロッドを析出させ、さらに金ナノロッドの長さを制御する点に注力した。具体的にはアミノ基修飾したSBA-15のメソ孔内壁に金イオンを吸着させた後に、金イオンを還元することで金を析出させ、それを繰り返すことで、SBA-15の筒状細孔の内壁に沿って金を還元析出させ、金ナノロッドを形成させた。その後、熱処理や特定の波長を有したレーザの照射により、金ナノロッドを適度に短くすることで、金ナノロッドの長さを制御した。金ナノロッドの直径はSBA-15の筒状細孔の直径により決定されるため、金ナノロッドの長さの変化は、金ナノロッドの長軸方向に振動する局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)波長にダイレクトに反映される。金ナノロッドの長さを8-150nmで変化させることで、LSPR波長を600-2500nmの範囲で、おおまかに制御できる手法を見出した。さらに、SBA-15薄膜の作製も行い、膜中での金ナノロッドの形成にも成功した。析出した金ナノロッドはSBA-15中に良く分散して存在しており、このことはLSPR特性の劣化を招く金ナノロッドの凝集を防ぎ、且つ高濃度に金ナノロッドを含んだ膜状材料の作製に成功したと言え、金ナノロッドのLSPRによる電場増強や光吸収を積極的に利用した新規光デバイスの開発につながると考えられる。次年度はさらに、膜中における金ナノロッドの配向を制御することで、偏光特性を付与した材料の作製を行い、ナノサイズの偏光フィルター等への応用の可能性を探る。
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