近年、都賀川豪雨災害(2008年)に代表されるように、とりわけ都市部で豪雨災害が頻発している。水工学の分野においては、河川流出管理・ダム操作・下水道の排水処理といった防災の観点から、1時間先~数時間先における降水量を高精度に予測することが極めて重要である。そこで防災気象情報の高度化を実現するために、最新型の偏波レーダーの観測情報をデータ同化することで、予測大気モデルの初期値を現実らしく与える手法を開発することを狙い、特に、短時間先の地上降水量予測に大きく影響を及ぼす大気上空に存在する水物質(あられや雪片や水蒸気など)の初期値精度を格段に向上させることを目的とした研究を実施した。平成22年度の成果は以下の通りである。1.2009年6月の沖縄県における豪雨事例を対象に、GPS可降水量と呼ばれる水蒸気の鉛直積算量を用いた解析を行い、豪雨をもたらす積乱雲が発生する直前にGPS可降水量が増大していることを示した。2.GPS可降水量を大気モデルヘデータ同化するためのルーチンを従来までに自己開発してきたメソ気象データ同化システムCReSS-LETKFに組み込んだ。その際には、アンサンブルカルマンフィルタの各種パラメータの最適設定を行った。3.水蒸気量の鉛直分布のデータ同化による効果を調べるための理想実験を行い、2時間先の降水予測精度の向上を示した。また、以上の結果を受けて、今後の展開としてレーダーによる観測値と水蒸気量を組み合わせてデータ同化することを予定している。最後に、本研究成果は降雨予測の精度向上を通して大いに社会への還元や貢献が期待できる。
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