研究概要 |
地球温暖化による河川流況変動に関する研究の最大の問題点は,気候モデルの詩空間スケールが河川流況変動の影響評価に用いる水文流出モデルのスケールに及ばない点である.今までは,この問題を解消するために様々な統計的及び物理的ダウンスケーリング手法が研究・利用されたが,気候モデルの将来気候出力に対するダウンスケーリング結果はそのいずれも安定的な結果を提供する事ができなかった.本研究は,文部科学省21世紀気候変動予測革新プログラムで開発されている超高解像度全球大気モデル(AGCM20)の20kmグリッドの出力に対して,より高解像度の地形特性をさらに反映することにより,安定的な地球温暖化による河川流況変動予測及び洪水・渇水のリスク評価が可能になる基本土台を提供することである.H21年度は,AGCM20の降水データの特性およびそのデータの河川流況変動予測への適用可能性について検討した.現在気候実験出力を用いて河川流況の再現性を評価したところ,数千km2以上の流域スケールに関してはAGCM20のデータそのままで適用可能であることが確認できたが,より小さな流域には安定的な解析が困難であることが明かになった.さらに,AGCM20の降水データはAMeDAS観測雨量データと比べて,降雨の地形依存性が低いことが確認できた.現在は,AGCM20の降水データが持っているこれらの特性を考慮して,空間スケールが気候モデル出力に及ぼす影響を定量化することを進めている.地形解像度による豪雨発生頻度・降水の空間分布特性・標高による温度変化等の現象がどの程度異なるかを定量化して,AGCM20出力値の地形特性反映度合を向上する手法を開発する予定である.
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