高周波プラズマソースを用いた分子線エピタキシー法によって作製した、窒素をデルタドーブしたGaAsにおいて、窒素ペアに束縛された励起子の微細構造分裂の歪みと磁場による制御性を発光分光測定によって検討した。窒素の面密度を変化させた試料からの発光スペクトルと、電子-正孔間交換相互作用と歪みによる局所場効果、励起子ポピュレーションを考慮した計算結果を比較することによって、歪みによって励起子微細構造の分裂エネルギーと振動子強度が制御できることを明らかにした。さらに、Faraday配置とVoigt配置で測定した磁気発光スペクトルと、Zeeman相互作用を考慮した計算結果を比較することによって、C_<2v>対称性を保った場合における励起子微細構造の磁場依存性を明らかにした。Voigt配置における同一の直線偏光成分をもつ励起子微細構造の反交差的な振る舞いによって、直交する直線偏光成分をもつ励起子微細構造のエネルギー準位を縮退させることが可能であることが明らかになった。この結果は、不純物束縛励起子における、励起子分子-励起子のカスケード発光を用いたもつれ光子対生成の実現可能性を示唆するものである。また、励起子分子-励起子のカスケード発光を用いるためには同一の窒素ペアに束縛された励起子分子発光と励起子発光を観測する必要がある。そこで、各発光線の励起光強度依存性と励起子微細構造の分裂パターンを比較することによって、同一の窒素ペアに束縛された励起子分子と励起子による発光線が観測できていることを明らかにした。
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