研究概要 |
現代社会の発展に伴い,情報通信量は飛躍的に増加しており,情報通信を担う半導体デバイスは高速・大容量・低損失であることが求められている.これを実現する半導体デバイスすなわち次世代高周波パワーデバイスを実現する材料として,ワイドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN),窒化アルミニウム(AlN)が着目されている.高周波用途パワーデバイスとしては,AlNとGaNを用いたAlGaN/GaNヘテロ接合によるヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)が有望視されているが,我々は,SiCとAlNのヘテロ接合をデバイスに利用し,SiCを高周波用途に用いることを考えた.AlNとSiCは,ともに六方晶であり積層順序を除いて構造が類似している,格子定数差も約1%と比較的小さい,などの特長を有することから,SiCはAlN成長用基板として用いられる.これまでの研究で,通常用いられる(0001)面ではなく,90゜傾いた(11-20)無極性面上にAlNを分子線エピタキシー成長することで,AlNの積層順序が4H-SiC基板と同一になる,同一ポリタイプ成長を見出し,成長した4H-AlNの高品質化を実現してきた.この高品質4H-AlN/4H-SiC界面は,欠陥密度が極めて小さく,ヘテロ接合デバイスへの応用が期待できる.本研究では,デバイス応用に向けて,4H-AlN/4H-SiC界面物性の評価を行うことを目的として研究を行った. 4H-AlN/4H-SiC界面物性評価を行うデバイスとして,ホール素子の作製プロセスの検討を行い,実際に作製を行った.実際に作製したホール素子について低温で測定を行う予定であり,これによって,4H-AlN/4H-SiC界面近傍のSiCにおける二次元電子ガスの存在を示すごとができる.また,4H-AlN/4H-SiC界面を利用したデバイスである,金属絶縁膜半導体電界効果トランジスタ(MISFET)の作製を行った.これまでデバイスの動作割合(歩留まり)に問題があったが,プロセスの再検討を行うことで,歩留まりを改善することができた.今後,ホール効果測定より得られる界面物性に関する知見をもとに,4H-AlN/4H-SiC MISFETの性能向上を目指していく.
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