平成21年度の本課題研究に関わる成果は以下の通りである。 ・ 沖縄本島東岸の河口干潟を対象として、底質性状が砂質から泥質まで異なる23地点で調査を実施した。底質と流速の関係解析においては、高流速が高い頻度で観測される地点で底質の細粒分含有率(以後含泥率とする)が低い傾向であったのに対し、その頻度が低い場では含泥率が非常に広くばらついた。このような高流速の発生頻度が低い地点では、流入物の粒径組成に底質性状がより大きく影響を受けていると考えられ、現在底質含泥率の物理的決定機構のさらなる検討とモデル化を行っている。また、含泥率の急激な変化が起こる流速の閾値が捉えられており、平成22年度はその値の精度等について検討を行ったうえで、沿岸域における人為的な水理環境改変がもたらす底質性状変化の閾値として提示することを目指す。 ・ 放射性同位体^7Beおよび炭素安定同位体を用いた細粒底質動態の調査手法を開発し、本課題研究の調査に応用した。その結果、数10日~数100日のオーダーでの底質-直上水界面での細粒底質の動態解析に有効であることが示された。また、底質性状によって、含泥率が動的に維持される物理的機構の時間スケールが大きく異なっていることが明らかとなった。 ・ 沖縄本島西岸のサンゴ礁域を対象に予備的調査を行った。平成22年度のサンゴ礁における本調査実施に向けて、堆積物動態及び群集構造の調査手法が検討され手法が選択された。 平成21年度は、干潟を中心に底質性状が動的に維持される機構についての知見が集積され、あわせて本課題研究で必要となる調査手法が検討された。平成22年度は、調査対象域をサンゴ礁に拡大するとともに、気象・海象に関連する各種時系列データを含めた解析から、長期的時間スケールでの生態系の安定性を念頭に置いた生態系管理手法の提案を目指す。
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