本研究では、環境負荷の少ない非鉛強誘電体材料として注目されているマルチフェロイックBiFeO_3(BFO)薄膜の基礎物性の解明と作製プロセス開発を行った。 1. BFO薄膜におけるリーク電流の精密評価 本研究ではパルスレーザ堆積法(PLD)および化学溶液法(CSD)により作製したBFO薄膜のリーク電流と膜微細構造の関係を、電流検出型AFMを用いたリーク電流の面ないマッピングを行うことで明らかにした。その結果BFO薄膜のリーク電流はグレインバウンダリおよび、結晶粒中の両方で流れることがわかった。しかしリーク電流はグレインバウンダリで顕著に流れることを明らかにした。 2. BFO薄膜における圧電性の精密評価 また、PLD法で作製したBFO薄膜の圧電性の精密評価として電場印加下における時分割X線回折を行った。SPring-8 BL13XUの坂田氏と共に小型低温チャンバを立ち上げ、同実験を80Kの低温で行うことに世界で初めて成功した。低温において電界誘起相転移等は観察されなかったが、(100)配向結晶粒の80Kにおける圧電定数d_33が20.2pm/V程度であることを明らかにした。 3. イオンビームスパッタ法(IBS)を用いたBFO薄膜の作製 高品質BFO薄膜の作製を目指し、これまでに報告例のないIBS法を用いたBFO薄膜の作製を行った。IBS法は高エネルギー粒子の生成が可能であるため、高品質薄膜の作製が期待できるプロセスであり、従来のrfマグネトロンスパッタ法では得ることが難しい、D-Eヒステリシスループを室温で観察することに成功した。
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