六方晶窒化ホウ素(h-BN)はグラファイトと同様の構造を持つ層状物質である。グラファイトでは数多くの元素がグラファイト層間にインターカレートされ、層間化合物(GIC)を形成することが知られているが、h-BNではh-BN層間化合物(h-BNIC)に関する報告例はほとんどない。本研究では、通常行われる石英管への封入ではなく金属管に試料を封入し、1300℃の高温で熱処理することで、Liをインターカレートしたh-BN(Li-h-BNIC)の作製に成功した。また、昨年度の結果から、Li-h-BNICの構造を求めることができた。 h-BNは絶縁体であるが、Liインターカレーションにより室温での電気伝導率が8桁向上したことがわかった。また、その温度依存性は可変領域ホッピング伝導を示していた。昨年度の結果から、Liインターカレーションによる乱層化が示唆されており、可変領域ホッピング伝導が生じたことは構造の乱れに由来していると考えられる。また、電気伝導測定は表面に敏感であるため、試料そのものではなく表面に析出した不純物相に由来している可能性もある。また、試料のXRDパターンでは、h-BNの(002)のピーク強度が強く、インターカレーションが試料の表面付近だけで起こっていることが示唆された。 Li-h-BNICの磁化率を測定した結果、常磁性を示すことがわかった。また、2Kまで超伝導は観測されなかった。インターカレーションによるパウリ常磁性の変化から金属転移について検討したが、試料中に含まれる不純物が多いため、Li-h-BNに由来する磁性のみを取り出すことができなかった。より純良な試料を作製し、測定を行う必要がある。
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