ハイドロゲル上における液膜流れの可視化実験から、表面近傍においてすべり流れとなっていることが分かった。また、ハイドロゲルの含水量(膨潤度)に比例してすべり速度が増加し、また含水量に反比例して壁面せん断応力が低下していることが確認された。元来固体表面における流体の流れは、基本的に統計的観点から流体の運動がない、すべりなし流れとなることが基礎流体力学で広く知られている。表面近傍におけるすべり流れは、ゲル表面における流体摩擦を軽減させる傾向を示すものであり、これまでの固体表面における表面近傍におけるすべりなし流れとは異なる流れとなることがわかった。壁面近傍においてすべり速度を持つ分、最大速度となる液膜表面における速度は、すべり流れの増加に反比例して減少する傾向が実験により得られた。これは、壁面近傍のすべり速度を理解するための理論計算と良好な一致を示すものである。またこれまでの物体に作用する摩擦損失の低減方法としては、乱流制御より壁面近傍を再層流化することによって壁面における速度勾配を制御する研究や流体内に高分子を混入することによってトムズ効果を利用し、摩擦低減を行う研究が行われてきた。これらの摩擦低減方法では、壁面近傍を層流速度分布にさせ摩擦低減を行うものであり、最小の摩擦損失は層流時の速度勾配から得られる壁面せん断応力となる。本研究で得られた結果は、層流時における速度分布をさらに摩擦低減を示す速度分布へと変化させうる結果を示しており、これまでの摩擦低減手法と併用しこれまで以上の摩擦低減の可能性が期待される。
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