本研究の目的は、タイにおけるCODI(Community Organizations Development Institute)支援の住環境整備事業(BMP : Baan Mankong Program)に参加している都市貧困層コミュニティの内部で組織化されている小規模住民組織を対象に、その妥当性、有効性、効率性について展開事例から比較検証し、都市貧困層にとって住環境整備の計画実施の実現性を高める開発手法であることを提示することである。本研究の調査対象地域は、2003年のBMP10パイロットプロジェクトのうち9地区を選定している。初年度の平成21年度は、2003年から実施してきた現地調査によってすでに調査が完了している5地区から得られた膨大なデータの整理と分析を行うとともに、2010年1月下旬から約2週間のスケジュールで現地調査を実施した。この現地調査で得た主な成果は次の通りである。(1)段階的に開発を進めているバンコクのボンガイ地区は、第3フェーズのBMPが現在進行形である。それぞれのフェーズにおける小規模住民組織の形成過程やその役割についてコミュニティリーダーへの聞き取り調査を実施した。(2)移転事業であるウタラディット県のブーンクック地区では、貯蓄組合スタッフへの聞き取り調査から小規模住民組織が形成される、または形成されないといったメカニズムを把握することができた。また、質問紙調査を貯蓄組合スタッフの協力で実施し、約70世帯からアンケートを収集した(面接式)。この他、当該地区の住民が元々住んでいたサイトの一つであるヂャルーンバンディット地区にて現地調査を実施し移転前の居住環境を把握した。(3)この他、バンコクの調査対象地域で補完調査を行った。これら現地調査の成果については、各種研究会で報告しているが、投稿論文(査読付)を現在執筆中である。
|