本研究の目的は、タイにおけるCODI(Community Organizations Development Institute)支援の住環境整備事業(BMP: Baan Mankong Program)に参加している都市貧困層コミュニティの内部で組織化されている小規模住民組織を対象に、その妥当性、有効性、効率性について展開事例から比較検証し、都市貧困層にとって住環境整備の計画実施の実現性を高める開発手法であることを提示することである。最終年度の平成22年度は、これまでの現地調査から得られたデータの整理及び分析を行うとともに、2010年8月10日~24日、11月23日~29日に現地調査(補完調査と経過観察を含む)を実施した。 本研究で得られた主な成果として、小規模住民組織を単位とした開発手法の特性は、大きく分けると次の二つに位置づけることができる。小規模住民組織によるコミュニティ開発について比較してみると、第一に、バンコク都のボンガイ地区のように再開発における「均等全面型」の開発手法として位置づけられる。ボンガイ地区の開発は路地ごとに小規模住民組織を形成し、火災で家屋を損失した202世帯の復興計画として画一的な計画に決定し、段階的に開発を実施した。第二に、ガオセン地区のように再区画整備における「均等包括型」の開発手法として位置づけられる。ガオセン地区の開発はブロックごとに小規模住民組織を形成し再区画整備を実施した。 都市貧困層に対する再区画整備のような改善型開発では、均等全面型の開発手法のような公的領域を一定に引き上げていくことは難しい。つまり、こうした開発の場合、行政主導の計画通りには開発が進まないことが考えられる。加えて、均等全面型の開発手法を実施したボンガイ地区においても、事業後の路地の環境整備において、不均等包括型の開発手法の現象は起きている。こうした開発の効果の差異は、コミュニティの内部で生じており、近年のコミュニティ開発では不均等包括型の開発手法が実践されている。
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