本研究は、増加する外国人人口と都市既成市街地、特に老朽住宅市場との関係について理論及び実証研究を行うことを目的とする。今年度は、ロサンゼルス、東京都と大阪府の国内事例を中心に、以下の3つの項目について研究作業を進め成果をあげた。 (1) ロサンゼルス都市圏におけるアジア系外国人、ヒスパニック系外国人、ヨーロッパ系外国人の住宅、居住地選択について、過去20年間の在米期間別に分析を行った。その結果、同じエスニシティでも対米年数により住宅・居住地選択の差異がみられた。特にヒスパニック系外国人は、老朽住宅の多い中心市街地における居住傾向が高いことがわかった。 (2) 東京・大阪における事例において、定住外国人と新来外国人の居住地分布のGIS地図を作成し、分析した。その結果、特に大阪において新来外国人と定住外国人の地理的分布に差異が大きく、定住外国人は大阪市に、新来外国人は大阪市外に居住する傾向にあることがわかった。老朽密集市街地との関係については、東京や大阪の事例ともに、これらの地域の空間分布と外国人、特に新来外国人との相関関係は確認できなかった。日本の都市と海外都市における外国人居住の状況の違いを明らかにすることができた。 (3) 新来外国人が多く住む大久保地域以外の東京の不動産業者に外国人居住者との賃貸契約に関するヒアリング調査を行った。その結果、比較的空室の多い地域においても、外国人、特に日本語が不自由な外国人に部屋を貸すことを敬遠する大家は多いことがわかった。 主要な研究結果は、日本都市学会において発表したほか、『日本都市学会年報』への掲載論文として採択された。
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