平成21年度に行った研究を説明する。コンクリートの表面に発生するひび割れの深さおよび幅に対する進展具合を波形および周波数スペクトルを用いて評価した。まず、400mm*400mm*200mmのコンクリート供試体を作製し表面に深さ50mmの穴を開けた後、静的破砕剤を充填し人工的に拡幅するひび割れを作り出した。時系列でひび割れは拡幅していく中、0.05mm毎に衝撃弾性波法(インパクトエコー法)を適用し波形データを記録した。なお、計測は構造物の安全性を保つのに限界であるひび割れ幅0.5mmまで実施した。そして、計測データをスペクトル解析することで周波数スペクトルへ変形させた。まず、波形データを分析するとひび割れ深さが深くなり、ひび割れ幅が拡幅するにつれて波形は周期が短くなり振幅も減少する傾向になった。また、ひび割れが発生するとコンクリートの表面と底面での弾性波の到達時間が健全時と比較し逆転する現象が生じた。次に周波数スペクトルを分析すると、ひび割れ発生後の周波数スペクトルと健全時の周波数スペクトルを比較すると健全時に存在したスペクトルピークがひび割れ発生後は消滅あるいは移動する傾向が観られた。さらに、ひび割れ幅が拡幅するに従ってひび割れ発生後の周波数スペクトルのピーク周波数の変化が顕著に確認された。以上より平成21年度の研究ではひび割れの進展具合を波形および周波数スペクトルにより確認できる可能性が得られた。これは、「研究の目的」に挙げているインパクトエコー法の適用限界の導出につながる。
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