研究概要 |
本研究では,将来ROVに搭載可能な羽ばたき型の推進機構の推進性能を調べた.ウミガメ型の羽ばたき翼をROVに搭載する場合,回転モーター等の駆動源の出力を往復運動に変換する必要があり,エネルギー効率は回転するスクリューに劣ると思われる.しかしながら羽ばたき型の推進機構は浅瀬で運用しても破損の恐れが少なく,また作業者を巻き込む心配もないことから,沿岸域での運用が可能であると見込まれる.さらに沿岸で見られるさざ波や波の通過に伴って発生する数秒周期の往復流場に対して,流れの状態に合わせて振り下ろすタイミングを調整することでスクリューよりもエネルギー消費が少なく,効率的な推進機になる可能性がある. 本研究では,簡単な翼素理論に基づき製作した振動翼の定常流中及び周期的な脈動流中における推力の比較と,脈動流中で振り下ろすタイミングに伴って変化する推力について調べることを目的とした.本報告では,はじめにの脈動流中での水理実験を行うために,PLCを付け加えた小型回流水槽で周期2秒及び5秒の脈動流を発生させた.脈動流発生時の測定部断面の流速分布は水面付近及び壁面近傍を除いて一様性は概ね良好であることを確認した.つづいてウミガメの前肢をモデルとした羽ばたき型の推進機を製作し,定常流中ならびに脈動流中での推力の特徴を調べた.推力測定の結果,脈動流中では振り下ろすタイミングによって発生する推力が大きく異なり,流れの減速時に羽ばたき動作を行うことで大きな推力を得ることが確認された. 以上のように,ウミガメの遊泳に学んだ羽ばたき型の推進機構は脈動する流れのタイミングに合わせて駆動することで,エネルギー消費の少ない推進機構になる可能性が示された.
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