本年度は、(1)グラフェンの成長法の検討、および(2)グラフェン・スピン素子作製の際に重要となるグラフェン/磁性金属界面の相互作用の調査を行った。(1)MgOやサファイヤなどの絶縁体単結晶基板上にコバルトまたはニッケル薄膜をエピタキシャル成長させ、ベンゼンを前駆体に用いた超高真空化学気相蒸着法によりグラフェンを成長した。ベンゼンの曝露量の調整によりグラフェンの成長速度を30min/ML程度に制御し、反射高速電子線回折(RHEED)の回折強度プロファイルの変化から、グラフェン成長過程のその場観察に成功した。さらに、コバルト、ニッケル層のエッチングによりエピタキシャル成長したグラフェンの任意基板上への転写を行った。(2)剥離法で作製したグラフェン(単層~数層)に種々の金属薄膜を蒸着し、金属-グラフェン相互作用を顕微ラマン分光により調べた。単層グラフェンと2層以上のグラフェンにおいて、金属との界面相互作用の様相が異なることを明らかにした。単層グラフェン-金属においては、化学結合的な強い相互作用が存在することがわかった。一方、グラフェンの層数が2層以上になると界面相互作用が物理吸着的に変化することを明らかにした。
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