研究概要 |
近年、優れた強度・靭性バランスと良好なサイクル性を有する超微細結晶鋼は重要な研究テーマの一つになっている。動的フェライト相変態と動的フェライト再結晶は組織微細化の主な方法であることが認められているが、大歪熱間加工中に動的フェライト変態とその結晶方位変化を直接観察した例はない。中性子回折は材料組織形成の研究に極めて有力な実験手法であり,特に飛行時間法中性子回折は析出,回復・再結晶,相変態等による組織形成の解析に使われ始めたが、集合組織の結果は報告されていない。 平成21年度は、動的フェライト変態した試料に対し、角度分散法中性子回折装置で測定し、その結果をスタンダードとして米国HIPPO(LANSCE)飛行時間法集合組織測定装置の信頼性を定量的に評価した。飛行時間法は角度分散法の5%の測定時間で後者とほぼ同じ信頼性の集合組織結果が得られるので、フェライト変態や再結晶中のその場集合組織変化の観察に適することが分かった。 また、以上の集合組織の測定結果とこれまでに得た逆極点図をもとにフェライト変態に及ぼす二相域加工の影響を検討した。単相域加工と二相域加工は動的フェライト相変態を促進することを確認した。また、二相域低温加工中に一定の歪みに達すると動的フェライト再結晶が始まり、動的フェライト変態と競合する。引き続き加工すると、動的フェライト変態と動的フェライト再結晶との競合によって全体微細化組織が得られることが明らかとなった。
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