プラズマ流は核融合実験装置や宇宙・天体環境において観測される普遍的な現象である。プラズマ流の安定性解析は、学術的に興味深い問題であると同時に、流れによるプラズマの安定化は高性能核融合炉の実現に必要であるため、実用上も重要な研究課題である。プラズマ流の安定性において重要となる効果を抽出する手法の一つに、「接続法」と呼ばれる境界層理論がある。接続法を用いる場合、解を接続するために、問題を解く前に全プラズマ領域を「内部層」と「外部領域」に分割する必要がある。内部層は、安定性を決める効果(例えば共鳴)が重要となる領域(共鳴面と呼ぶ)を含むよう設定する必要がある。外部領域は内部層以外の領域を指し、慣性の効果を無視した方程式により支配される。本研究では、プラズマ流の安定性解析においては、流れがない場合に有理面に縮退していた共鳴面(特異点として現れる)が二つに分離し、それらの位置が先験的に分からないという数学的問題があるため、従来の接続法では特異点解析を原理的に行えないことを指摘した。この問題を解決するために、新しい接続法を提案した。内部層の概念を一般化して有限な幅をもつ内部「領域」を用いると、共鳴面を捉えることができ、流れをもつプラズマの接続問題が解けることを示した。更に、当理論に基づいて、円柱プラズマモデルを解析する数値計算コードを開発した。具体的な問題として、抵抗性壁モードの安定性に関し数値解析を行い、流れの効果が重要となる領域を明らかにした。
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