研究概要 |
多大なエネルギーを消費する空調システムの省エネルギーを達成するためには,運用段階においてシステムの運転設定値を最適化することが重要である.既往研究による最適化は,建物や空調二次側システムの応答を考慮していない部分最適化である場合が多く,システム全体でみると最適ではない可能性がある.また,厳密には動的最適化問題であるにも関わらず,静的な問題として解いている.そこで,本研究では,建築と空調設備システムの相互作用を考慮した動的な最適化問題として運転設定値を見出す新たな手法を開発し,実建物に適用して手法の有効性を明らかにする.平成21年度は,標準的なオフィスビルの空調システムシミュレーションの開発を行った.このシミュレーションは,建物と設備の相互作用を解くことができるように,1分間隔で室熱応答を計算できる室熱収支モデル,空調機器モデル,制御ロジックモデルを組み合わせて開発した.また,動的最適化問題としての定式化を試み,操作変数(運転設定値)の操作範囲や最小操作量,目的関数の与え方,最適化実行時間間隔(政策決定回数),求解に必要な演算時間などについてシミュレーションを利用して検討を行った.また,実稼働状態にあるシステムを対象にシステムシミュレーションを作成し,最適化手法の適用を試みた.今年度は試行として熱源一次側システムのみの最適化を実施し,約4~10%の省エネルギー効果があることを実証した.
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