研究概要 |
衛生設備の整っていない発展途上国だけでなく,設備の整った先進国でも水系の感染症が発生しており,深刻な衛生問題となっていることから,水源における水系病原微生物の汚染実態を把握することは急務の課題である。しかしながら,病原性原虫等の一部の微生物を除いて調査範囲が限定されているのが現状である。調査が遅れている要因の一つとして,検査法の複雑さ・煩雑さが挙げられる。Real-time PCR法に代表される従来の水系病原微生物の定量法は,高価な装置を必要とし,さらに共存する阻害物質の影響で,正確な定量が困難であった。そこで本研究では,新規遺伝子定量法として近年報告されたエンドポイント蛍光消光法を利用することで,高価な装置を必要とせず,さらに正確な測定が可能な水系病原微生物の新規定量法を確立することを目的とした。 水系病原微生物の代表例としてクリプトスポリジウムを選定し,18S rRNA遺伝子を対象とした定量系の確立を試みた結果,18S rRNA遺伝子数が10~10^5 copiesの範囲において,サンプル間の変動が小配さく,再現性の高い検量線を作成することができた。さらに水環境(河川水)サンプルに適用した結果,新しく構築したエンドポイント蛍光消光法を用いた微生物定量系は,高価な実験装置を使用する既存Real-time PCR法と同程度の精度で水環境中のクリプトスポリジウムオーシスト濃度を定量することが可能であった。
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