研究概要 |
高圧環境と深海微生物の脂質代謝は密接な関係性があると考えられる。一方で、最近機能性バイオ素材として応用開発が進んでいるバイオサーファクタント(BS);マンノシルエリスリトールリピド(MEL)は、生産菌であるPseudozyma属酵母の系統学分類と主生産物のアセチル化度や脂肪酸側鎖に高い相関がある。そこで、特殊な脂質代謝系を有することが期待できる深海の高圧環境由来のPseudozyma属酵母を用いて、新しい構造のBSを生産できる可能性が高いと考え、JAMSTECが保有する深海由来酵母ライブラリーからPseudozyma属酵母の探索し、BS生産条件を決定した。さらに、生産されるBSの構造解析を実施した。探索の結果、深海由来酵母SY62株がPseudozyma hubeiensisの近縁種であることがわかった。BSの生産性を調べるため、一般的な油脂を単一炭素源とするMEL生産用培地を用いた場合、BSの生産量はTLC分析の検出限界以下であった。さらに、グルコースを加えた場合,約30g/Lの糖脂質を蓄積していることがわかった.主生産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、^1H-、^<13>C-NMR、MALDI-TOF-MS、GC-MSを用いて、詳細に構造解析を行った結果、既存のP.hubeiensis同様MEL-Cが主成分であったが、短鎖脂肪酸の含有量が多いことがわかった。また、当該MEL-Cは脂肪酸鎖長が短いことから、既存のMEL-Cより親水性が高いことがわかった。
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