微生物が発酵生産するバイオサーファクタント(BS)は環境にやさしい界面活性剤としての応用が期待されている。BSを利活用するために、効率的な発酵生産が可能なBS生産菌の取得や培養方法の改良は重要な研究課題である。前年度取得したBSの一種マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)を生産する菌Pseudozyma hubeiensis SY62株を用いて、培養条件の検討を実施した。撹拌振とうフラスコを用いて、培養温度・撹拌速度などの条件検討に加え、培地組成の検討を実施した。また、MELの生産量を推定するために高速液体クロマトグラフィー・蒸発光散乱測定(HPLC・ELSD)法を導入した。培養条件検討の結果、MEL生産の最適温度ならびに撹拌速度は25℃ならびに200rpmであった。さらに培地組成の検討をした結果、炭素源として、100g/Lのグルコースならびにオリーブ油と10g/L酵母エキスを添加した培地でMELの生産量は3日間で約50g/Lに達した。このことから、酵母エキスがMELの生産を促進することがわかった。しかしながら、3日間で炭素源をほぼ消費していることから、炭素源の逐次添加培養が効果的であることが推測された。そこで、3日目にさらに100g/Lのグルコースとオリーブ油を添加する逐次添加培養を行った結果、7日間の培養で129g/LのMELを発酵生産することができた。培養液体積あたりの生産性は18.4g/L/dayに達し、既存の報告にあるMEL生産方法と比べて、最も効率的にMELを生産できることがわかった。
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