減数分裂により配偶子が形成されることで、子孫の維持が行われる。この時、相同組換えを伴う。減数分裂期相同組換えは、遺伝的多様性の獲得と正確な染色体分配の保証という点で重要な役割を担っている。減数分裂期相同組換の開始反応であるDNAの二本鎖切断(DSB)は時間的、空間的に厳密に制御されていることが明らかになりつつある。このように、減数分裂期のゲノム動態を理解する上で、DSB形成機構を理解することが重要であると考えられる。本研究では、空間的なDSB形成機構の解明に焦点を当てている。これまでに、減数分裂期の高次の染色体構造形成に重要であるRec8が、DSB形成に関わる酵素Spo11の染色体への結合を何らかの機構で調節することで、DSB形成に関わっていることを示してきた。DSB形成には他に補助因子として9種類のタンパク質が必要である。これら全てのタンパク質が染色体に結合し、さらに活性化を受けることでDSB形成がおこる。本研究では、Spo11の染色体への結合に加えて、Rec8が、それらの過程にも関係しているか、Spo11と物理的な相互作用をしているのかを分子レベルで明らかにすることを目的としている。解析の段階で、クロマチン免疫沈降法、DSB形成のターゲッティング技術、複合体形成の解析技術が必要となる。そのために、遺伝子改変を行った酵母株を準備する必要がある。今年度は、研究実施計画に従い、解析に必要な株の作製を行った。来年度は実際に解析を行っていく。また、Spo11とRec8の相互作用については解析を始めている。現在のところ、免疫沈降ではSpo11とRec8の物理的相互作用は検出できていない。しかし、タンパク質のターゲッティング技術とクロマチン免疫沈降法を組み合わせた手法で物理的相互作用を示唆するデータが得られ始めている。今後、さらに検証を進める必要がある。
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