研究概要 |
本研究の目的はレトロトランスポゾン由来の遺伝子であるPeg11/Rtl1のアンチセンスRNAであるAntiPeg11/Rtl1as由来のmicroRNAがマウスの発生において果たす役割を明らかにすることである。昨年度の研究によりこれらのmicroRNAがPeg11/Rtl1の発現を抑制することにより胎盤の大きさを調節することと、Peg11/Rtl1以外の標的遺伝子群の発現を抑制することにより胚の成長、生存、胸骨形成を促進することの二つの役割を持っていることが明らかとなっていた。 本年度はこうした役割がどのような分子経路により果たされているのかを知るためにmicroarray解析を行い、Peg11/Rtl1,AntiPeg11/Rtl1asの欠損が胚のtranscriptomeにどのような影響を与えるのかについて検討した。 その結果、Peg11/Rtl1を発現していない器官でもAntiPeg11/Rtl1asの欠損は多くの遺伝子の発現に影響を与えること、発現が上昇していた遺伝子の中にはAntiPeg11/Rtl1as由来のmicroRNAの標的候補遺伝子が含まれており、in vitro系においてそれらの発現がmicroRNAによて制御されることが確認された。 また、Peg11/Rtl1を発現する器官である胎盤、筋肉においてPeg11/Rtl1 KO, AntiPeg11/Rtllas KOおよびダブルKOの影響を解析したところ、ダブルKOではPeg11/Rtl1 KO影響とAntiPeg11/Rtl1as KOの影響が足し合わされていた。また、Peg11/Rtl1の欠損マウスとAntiPeg11/Rtl1as欠損によるPeg11/Rtl1の過剰発現の影響により発現が逆に変動していた遺伝子の中には胎盤における血管形成関連遺伝子、筋肉における筋肉形成関連遺伝子が濃縮されていた。
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