線虫は感覚神経によって餌の有無を感知し、餌の上に留まる。また、餌がない場合は産卵を停止し、餌を探して活発に動き回る。このように餌を感知する感覚神経の形成異常によって、自由摂食条件下で寿命が延長される事が知られている。昨年度までに、感覚神経の形成異常と断続的飢餓の関係を解析するために、感覚神経の形成が異常な変異体に対して断続的飢餓を行って寿命を測定した。その結果、感覚神経の形成異常による寿命延長効果は断続的飢餓による寿命延長効果と部分的に重複している事がわかった。また線虫では、感覚神経によって感知された餌の有無はセロトニン・オクトパミン・ドーパミン・チラミンといった神経伝達物質やニューロペプチドによって伝達されていることが知られている。それらの神経伝達物質が生合成出来なくなっているような変異体を用いて、断続的飢餓による寿命延長におけるそれら神経伝達物質の役割を検討した。その結果、セロトニン合成酵素が欠損した変異体では断続的飢餓による寿命延長が部分的に抑制されているという予備的結果を得た。以上の結果かは、セロトニンが神経において機能し、断続的飢餓による寿命延長に寄与している可能性が示された。また、感覚神経の形成が異常な変異体では、摂食量、産卵数は野生型と変化がないという事が報告されている。すなわち、これらの結果は断続的飢餓による寿命延長効果を、食餌制限を行わずに再現出来る可能性を示したという点で非常に重要な成果である。
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