研究課題
単細胞生物である酵母からげっ歯類まで幅広い種において、食餌を制限すると寿命が延長される。げっ歯類においては寿命が延長されるだけでなく、癌や糖尿病といった老化関連疾患の発症も抑制される。我々はこれまでの研究で、食餌制限の一種である断続的飢餓が老化研究のモデル生物、線虫Caenorhabditis elegansの寿命を大幅に延長することを報告し、アッセイ系を確立した。本研究では、断続的飢餓がインスリン様シグナルを抑制する分子メカニズムを解明し、実際に食餌制限を行わずにその寿命延長効果を再現する事を目的としている。これまでにC.elegansにおいて頭部感覚器の形成異常によって寿命が延長される事が知られていた。これらの頭部感覚器の形成異常を示す変異体は、餌の存在を感知できないために寿命が延長されているのではないかと考えられている。そこで、我々はそれらの変異体(daf-6, daf-7, daf-10, osm-3)に対して断続的飢餓を行い、その影響を検討した。その結果、それらの変異体は全て自由摂食条件下では野生型よりも長い寿命を示した。この時、これらの変異体は餌が豊富な条件下で培養したところ、発生の完了にかかる時間は野生型と変化がなかったため、正常に摂食行動を行っていると考えられる。一方、断続的飢餓は野生型の寿命を約60%延長したのに対し、それらの変異体においては約30%の寿命延長しか観察されなかった。これらの結果は頭部感覚器から入るシグナルの入力がなくなる事が断続的飢餓による寿命延長に寄与している事を示している。
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Journal of biochemstry
巻: 149 ページ: 381-388
Journal of biological chemistry
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