研究課題
本研究では、遺伝子発現ネットワークの「網羅的解析」と「新規作製」という二つのプロジェクトを行っている。今年度の新規作製プロジェクトでは、昨年度までに作製した遺伝子部品を組み合わせて、様々な「人工細胞間コミュニケーション」の作製を行った。その結果現在までに、細胞間の接触依存的に任意遺伝子の発現量を制御できるようになった。また最近、最初のリガンドとなる細胞から隣の細胞へと、遺伝子発現シグナルが伝播する様子のライブセルイメージングに成功した。これらの結果は、さらに隣の細胞への伝播やパターン形成など、より高度な細胞間コミュニケーションの実現を目指す基盤となるものである。また並行して、遺伝子ネットワークのモデリングとシミュレーションを行い、遺伝子ネットワークの振る舞いの予測と改良に活用した。一方、網羅的解析プロジェクトでは、「転写の波及効果」のメカニズム解明と普遍性の探求を行った。特に、波及効果が観察される領域のDNA配列をゲノム上の他の領域に移植し、人工的に波及効果を起こす試みを行ったが、移植先で新たな波及効果は観察できなかった。今回はウイルスを用いてDNA配列の移植を行ったが、今後は相同組み換えなど別の移植方法も検討したい。また、別の実験系で転写の波及効果が見られるかを試すため、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へのリプログラミング過程における網羅的遺伝子発現解析を開始したが、現在までのデータ解析では明らかな波及効果は見つかっていない。これらの結果は、波及効果が特定のゲノム位置や細胞の状況に依存した現象である可能性を示唆している。
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