研究概要 |
mRNAキャップ付加反応(キャッピング)は、一般的に核内のみで起こると考えられているが、最近、Greg Hannonらによる小分子RNAの研究や私が行っているβ-globin mRNA分解研究から、キャッピングが細胞質でも起こる可能性が示唆されてきた。キャップは細胞質での翻訳開始やマイクロRNAによる翻訳抑制に必須な構造で、その制御は遺伝子発現に重要な役割を果たす。私が提案するプロジェクトは、新規の遺伝子発現制御機構として細胞質キャッピングの重要性を示すことを研究目的とする。まず細胞質においてキャップ付加されるRNAの同定を試みた。細胞質キャッピングを特異的に阻害するために、劣性変異を持つギャッピング酵素を核移行シグナルの変異と核外輸送シグナルの導入により、細胞質のみに安定に過剰発現するテトラサイクリン誘導性のU2OS(ヒト骨肉芽腫細胞)安定細胞株を作製した。そしてテトラサイクリン処理有無の細胞から抽出したRNAをJiaoらが行ったuncapped RNA回収法(Jiao et.al., Plant Cell.2008, 20 : 2571-85)によりRNAサンプルを調整し、エクソンアレイを用いてRNAのキャップ状況の変化を測定した。しかしながら得られた結果はサンプル間での誤差が大きく、再現性に問題があった。そこで、以前に行った5'末端に1リン酸を持つRNAを分解するエクソヌクレアーゼで処理したRNAサンプルのエクソンアレイの結果と今回の結果を比較、検討したところ、細胞質でキャップ付加されると考えられるRNAを複数同定することができた。現在エクソンアレイの結果をreal-time RT-PCRにより再確認している最中である。
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